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大阪地方裁判所 昭和40年(ワ)657号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二、被告会社の責任原因(自賠法三条)

<証拠>によると、つぎの事実が認められる。

(1) 本件事故車は被告会社が昭和三九年九月ごろ訴外提中公次に対し所有権留保付月賦販売契約にもとづき売り渡したものである。

(2) 被告会社には新車販売課、中古車販売課、サービス(修理)課があり、被告檜皮は同会社の従業員(セールスマン)として、中古車販売および下取中古車の査定等に従事していた。

(3) 被告会社では一応勤務時間の定めがなされていたが、セールスマンはその仕事の性質上勤務時間が明確でなく、顧客の要求があれば夜間でも訪問し商談をすることが珍しくなかつた。

(4) 被告檜皮は本件事故発生の前日被告会社の顧客たる前記提中から中古車(オースチン)一台の注文を受けたので、同日午後八時ごろこれを運転して京都府綴喜郡にある提中の自宅まで届け商談をまとめ、時間が遅くなり帰りのバスがなくなつたので、提中が日ごろ事業用に使用していた本件事故車を借用することになつたが、当時この事故車はキャブレターの調子が悪かつたので、提中は被告檜皮に対しこれを貸与するとともに被告会社でその点検修理をしてくれるように依頼した。

(5) 被告檜皮は事故車を運転して同日午後一〇時三〇分ごろ大阪市生野区の自宅に帰りこれを自宅に保管していたが、翌三日午前零時過ぎになつて妹の子供が病気であることを思い出し、同市浪速区の妹の家までこれを運転して行く途中本件事故を起こした。

ところで、<証拠>によると、被告会社では顧客から自動車の点検修理を依頼された場合には必ず整備員がこれを受け取りに行くことになつており、セールスマンが点検修理のため自動車を会社に持ち帰ることは過剰サービスにもなるので禁止され、実際にもそのような例はなかつたというのであるが、<証拠>によると、セールスマンは自動車を販売したのち二、三日の間に管理訪問し売却した自動車の調子を尋ねることになつており、その際調子が悪ければ点検のためみずからこれを会社に持ち帰つてもさしつかえないことになつていたことが認められるし、また現在のように自動車販売競争の激烈な時代にあつては、販売会社の顧客に対するサービスも当然過剰とならざるを得ないのであるから、被告会社においても表面上はともかく、実際にはセールスマンが右の管理訪問のとき以外に顧客から自動車の点検修理を頼まれみずからこれを運転して会社に持ち帰ることは珍しくなく、会社はこれを黙認ないし放任していたと認めるのが相当である。

とすると、被告檜皮が訴外提中から事故車を借用すると同時にその点検修理を頼まれこれを運転して被告会社に持ち帰ることは、被告会社の業務の執行にあたるというべきである。本件事故は、被告檜皮が事故車を被告会社に届ける途中一旦自宅に保管しておきながら、前記のような私用運転に供しその運転中に発生したものであるけれども、被告檜皮の当時における運転目的、運転範囲等から判断すると、前記提中から点検修理を依頼され事故車を運転して帰る途中の被告檜皮が被告会社のためにする運転の延長において起こした事故とみるのが相当であるから、被告会社はこの事故につき自賠法三条により賠償責任を免れない。(谷水央)

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